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消化器外科 上部消化管(胃・十二指腸)

胃癌について

胃癌の治療は各施設で特に違うことの無いように胃癌治療のガイドラインといものが胃癌学会で作られ、胃癌学会のホームページに載っており当科でもこれに倣って治療をおこなっています。ガイドラインの大筋は以下のようなものです。早期の胃癌でも癌細胞の分化度が高いもの、つまり、癌細胞でも正常細胞に形が似ているもので大きさが2cm以下であれば内視鏡で切除し、それ以外のものは手術をし、進行がんであれば手術を行いしっかりとリンパ節も切除する。切除不能であれば抗癌剤等の治療を行っています。

当科での1991年の開院から1999年までの胃癌の治療成績は以下のグラフのごとくであり、胃癌学会のホームページで示されている5年生存率と差はありませんでした。Stageとは癌の進行程度を表すもので胃癌に限らず肺癌、乳癌など他の癌でも使われている言葉です。大雑把に言ってStageⅠは早期であり治療すればほとんどの場合治るというものでStageⅣというのは手術では取りきれないので、ほとんどの場合死亡するというものです。つまりStageの数字が大きいと死亡する確率が高くなるということです。下のグラフで見るとStageⅣの線は右肩下がりでStageⅠA、StageⅠBはほとんど水平な線となっています。これは生存している方が多ければ線は水平に近くなりますし、死亡する方が多ければ右肩下がりになるということ表しています。
図C:胸骨正中切開線(左:従来の切開線、右:皮膚小切開)

基本的な治療に関しては胃癌学会のホームページを見ていただくとして、治療困難なStageⅣについて、比較的良好な成績が得られてきましたので、こちらを紹介するとともに、StageⅠaの縮小手術について紹介したいと思います。 このホームページ作成が2006年ですが、上のグラフで、何故1999年までの治療成績を言っているかというと1999年6月からTS1という新しい抗癌剤が採用され、これまでとは明らかに治療方法が変わってきたこと、さらに治療成績が改善されてきたためです。上のグラフをみますとStageⅣの治療成績(5年生存率)は20%を下回り、1年以内に50%以上つまり半数以上の患者が死亡するというものでした。

1999年6月に当院でも新規抗癌剤であるTS1が採用となり、治療を開始しました。すると上のグラフの薄い青色の線をみると2000年以降のStageⅣの治療成績は1年以内に半数以上の患者が死亡するということはなくなり、1999年までのStageⅢbの治療成績とほぼ同等のものとなったことがわかります。これまでは抗癌剤治療が効いても生存期間は延長しないといった報告もありましたが、当科での成績は生存期間が延長していました。その治療方法ですが、まず抗癌剤治療をおこなって手術をするのか、手術をして抗癌剤治療をおこなうのかという問題があります。この点に関しましては現在研究が進んでおりますのでその結果を待つという状況です。当科では食事が詰まってしまう状況になった場合や、癌からの出血が止まらない場合には手術を先行して治療しています。2003年より抗癌剤治療はTS1という薬を初めに投与し、効果と副作用をみながらシスプラチンという薬を加え、次にタキソールという薬に変更するという治療を進めています。その内容はhttp://www.la-press.com/a-phase-ii-study-of-s-1-monotherapy-as-a-first-line-combination-therap-a1944で見ることができます。上図のように、TS1を加えた治療にしてからの治療成績が良いようです。抗癌剤治療は外来の化学療法室もスタートしており点滴中もテレビを見ながら治療を受けられるようになっています。ただし場合によっては化学療法室を使えないことがあります。

次に縮小手術です。StageⅠaであれば切除範囲も小さくして良いであろうということで当科では内科的に内視鏡切除ができない患者の治療に腹腔鏡手術をおこなっています。胃癌治療のガイドラインでは、まだ腹腔鏡手術オプションのひとつということになっています。リンパ節に転移が有ると腹腔鏡手術をおこなって良いという確証は有りませんので当科においてはセンチネルリンパ節生検をおこない、可能な限りリンパ節転移の無い方に腹腔鏡手術をおこなうようにしています。センチネルリンパ節生検とは乳癌や悪性黒色腫で既に臨床応用されているもので、リンパ節転移を検索するものです。現在まで当科での腹腔鏡手術にセンチネルリンパ節生検を応用した成績はセンチネルリンパ節生検ができたものが92.1%であり、生検できた場合の、正診率は100%であり、偽陰性率は0%でした*。手術中にリンパ節転移が確認された時は腹腔鏡手術を止めて通常の開腹手術に変更としています。この方法でこれまでに腹腔鏡手術での再発は有りません。

*;Rino Y, et al. Technique and assessment of sentinel lymph node biopsy usefulness in laparoscopy-assisted distal gastrectomy. Surg Endosc. 20:1887-1891,2006

(文責:利野 靖)