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横浜市大外科治療学消化器外科 沼田正勝

私の留学体験記

2015年から2年間、静岡がんセンターの大腸外科で留学の機会を頂きました。この場を借りて報告させて頂きます。

画像 全景静岡県立静岡がんセンター

留学を目指したきっかけ

 きっかけは一人の直腸癌の患者さんでした。局所再発を経験し、自分の手術の未熟さを痛感しました。
いくつかの施設を見学に行きましたが、静がん大腸外科の部長 絹笠先生の腹腔鏡手術手技を見た瞬間に、心が固まりました。
静がん大腸外科のチーフレジデントは、狭き門と聞きましたが、それから1年間、週1回の研修日を利用して手術見学に通い、雇って頂けることになりました。

静がん 所在地

静岡県の長泉町 皆さんご存知ですか? 
静岡というと遠いイメージがあるかもしれませんが、箱根を越えてすぐです。新東名の長泉沼津ICを降りて5分ほどで到着します。
三島や沼津にもすぐに行けます。
この辺りは富士山の伏流水がきれいなので、美味しいうなぎ屋さんが沢山あります。沼津港が近く、お寿司やさんも多いですね。自分のお金ではハードルが高いですが、卒業間近に、2年間のごほうび?として部長にとても美味しい寿司をご馳走になりました。

病院は高台にあり、富士山と駿河湾が望めます。

静岡がんセンターと富士山静岡がんセンターと富士山

 このあたり昔は何もなかったようですが、最近は人口も増えて来て大きなスーパーや、ショッピングモール、公園があったり、子育てはしやすいそうです。(僕は単身赴任でした。)

レジデントの環境

 静がん大腸外科はレジデントという存在をとても大切にし、育てようとしてくれています。そんな親心を感じながら、研修にはげむ事ができました。
コメディカルや事務の方も、親切な方が多く、病院全体として温かみ、ホスピタリティーを感じます。
 僕たちレジデントには外来業務や書類仕事は一切ありません。その分、手術の勉強に多くの時間を割くことができます。
 病棟業務は全て朝に済ませておくので、日中病棟から呼ばれることはほとんどありません。手術に入らないレジデントは、傍でモニターをずっと見ながら、執刀しているレジデントが受ける叱咤激励に耳を傾けています。

絹笠Dr 手術指導絹笠Dr 手術指導

 給与については、多くはありませんが、質素な暮らしをすれば、貯金をぎりぎり維持できるレベルです。(僕は、家の住宅ローンも払っていたので貯金はどんどんなくなっていきました。)

静がんで経験したこと

  大腸外科は毎日が手術日であり、年間600例の腹腔鏡手術が行われています。
  基本的に静がんでは、ほぼ全ての患者で腹腔鏡手術が行われます(骨盤内臓全摘は開腹です)。
 直腸癌ではロボット支援下手術が年間100例近く行われています。
 研修のはじめ3ヶ月間は、執刀権は与えられず、ひたすら静がんの手術を目に焼き付ける作業から始まります。4ヶ月目から執刀開始で、週に1-2例のペースで腹腔鏡下大腸切除を執刀させてもらいました。
 僕がはじめて執刀させてもらった時は、電気メスのフットスイッチを踏んだ瞬間に部長の撃がとびました。電気メスの当て方、組織へのテンションのかけ方、左手鉗子の使い方、腹腔鏡下手術手技を一から叩き直されました。
 手術指導はとても厳しく、幾度となく心をへし折られましたが、その熱い指導により、少しずつ自分の手術手技が変わっていくのを実感することができました。
 2年間で多くの腹腔鏡下大腸切除を執刀させて頂きました。低位前方切除や横行結腸切除、脾弯曲部癌などのAdvanced surgeryも経験することが出来ました。ロボット支援下腹腔鏡下直腸切除は助手として100例を超える症例を経験出来ました。その他、骨盤内臓全摘や、側方郭清(腹腔鏡 or ロボット)など、難度の高い手技も静がんでは日常的に行われています。

沼田術者沼田術者

 内視鏡外科技術認定医にむけたビデオ撮りの機会は、レジデント皆に公平に与えられます。ビデオ合格に向けた対策も良く研究されていて、定期的に開催されるビデオクリニックで指導を受けます。実際に静がん卒業者の多くのかたが、静がんのビデオで合格されています。
 僕のビデオ撮りの時も、スタッフ、レジデント、手術室看護師の方々 皆が一丸となって協力していただき、とても感謝しています。

 ロボット手術に関しては、レジデントは助手として手術に参加することになります。da Vinciは、最初は「得体の知れない大きな物体」という感じでしたが、毎週のように付き合っていると、すぐにロボットと仲良くなることができます。セッティングやドッキング、視野展開の補助、ガーゼを用いた直腸牽引、鉗子変更やトラブルシューティングなど、手術を円滑に進めるためのノウハウを多く学びました。術者鉗子の動きは見て学びました。例えばIMA授動のシーンでは「3番でpedicleを把持、剥離面を展開し、2番でカウンター、1番で切離」、直腸授動のシーンでは、「助手がガーゼで直腸を牽引し、ロボット3番で直腸を腹側に展開、2番で口側腸管をよけつつ剥離部のテンションかけ、1番で切離」のように定型化した術者の動きを把握していき、今後術者の機会が得られた時に、すぐに静がんの手術が再現できるようトレーニングしてきたつもりです。ロボットのConsole SurgeonとしてのCertificateも病院に費用を負担して頂き、取得させてもらいました。

直腸癌 daVinci 500例直腸癌 daVinci 500例

 学術面でも静がんでは厳しく指導をしてもらいました。
 指導してくれるスタッフと幾度となく修正を重ねて、ようやくスライドが出来た時の喜びは大きかったです。6回の発表の機会を頂き、うち2つの研究を英語論文として投稿する事が出来ました。

レジデントという仲間

 2年間、苦楽を共にした、大事な仲間です。皆、何かを犠牲にしてレジデントとしての道を選び、日々精進しています。僕よりも年下の先生が多かったですが皆尊敬できる先生ばかりでした。大腸外科は狭い世界ですが、その中で、全国から集まってきたレジデントと仲間になり、横のつながりを作ることができたのは、大きな財産となりました。これからも一生付き合っていきたいと思います。

集合写真集合写真

これから留学を考えている方へ

 まずは留学の目的をはっきりさせる事です。そして「目的」に合った「施設」選びが大事になることは言うまでもありません。
 経済的な準備が必要ですし、家族とも十分な相談の上で決める必要があります。留学は自分の選択肢を広げてくれるチャンスです。機会があれば是非チャレンジしてみてください。

 

 最後までお読み頂きありがとうございました。