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横浜市大外科治療学消化器外科 田村周三

私の留学体験記

留学先;niversity of Southern California及びUniversity of Michigan

 皆様こんにちは。横浜市立大学外科治療学教室の田村周三と申します。2013年1月から海外留学の機会をいただき、現在まで約23ヶ月米国に滞在しております。今回は私の留学中に起こった様々なことやそれについて思うところなどを留学記という形で皆様に御報告したいと思います。

 私は以前より海外留学への興味を持っており、学位取得の目処が立った2012年の年末頃に留学をすることが決まりました。目的は新規抗がん剤の開発を中心とした基礎研究で、場所は米国、カリフォルニアのUniversity of Southern California (USC)です。研究室はSchool of PharmacyのNeamati Labで、大島貴先生、山田六平先生にご紹介頂きました 。留学が決まってからはビザの取得や出国に関する様々な手続きに忙殺されましたが、それらを何とかこなして2013年1月10日に渡米をいたしました。


渡米に際しては山田六平先生が同行して下さり、 セットアップのサポートをして頂きました。またNeamati LabのShili君が彼の住んでいるアパートの 別の空き部屋を紹介してくれたため、住居はすんなりと決まりました。アパートはLos Angelesのダウンタウンに近いエリアで1DKくらいの間取り、家賃は$900/monthくらいでした。始めの1週間ほどは通勤の仕方を覚えたり書類の処理などをしながら過ごし、徐々に米国での仕事や生活へ適応していきました。 た。

Los Angeles で借りたアパートの外観Los Angeles で借りたアパートの外観です。あまり治安が良い地区ではないので、外周は頑丈な鉄の柵で囲われています…。

日々、手術のトレーニングを行っています。
仕事場のあったUSC School of Pharmacyのビルです。

 USCは1880年創立のカリフォルニアでは最も歴史のある私立大学で、メインキャンパスと医療系のキャンパスはLos Angeles 市内にあります。40,000人以上の学生が在籍する規模の大きな大学ですが、留学生の 受け入れにも積極的で、18,000人以上の海外からの留学生が在籍しています。これらのことからキャンパスには多様な人種、民族の人々が溢れており、その様子を見て、ああ自分はアメリカに来たのだな、と強く実感しました。

 

自分の拙い英語にがっかりしながら、周囲となんとかコミュニケーションを取り、ようやく生活や仕事が安定してきた2013年5月、ラボミーティングの席上でボスのDr. Neamatiから突然University of Michigan(UM) に移籍することになったと発表がありました。一瞬めまいがしましたが、付いていく他に選択肢はなかったため、これもいい経験になるだろうとポジティブに捉え、引越しの準備を始めました。

 数多の書類を処理し、膨大なラボの物品のパッキングを終え、6月にLos AngelesからUMの所在地であるミシガン州Ann Arbor へ引越しをしました。私は同僚のShili君と共に車で引越しをしたのですが、広大なアメリカ大陸を肌で感じながらのロングドライブはとても印象深く、生涯忘れ得ぬ思い出となりました。

さらば、California!さらば、California!

出発直前。待ってろよ、Michigan!
出発直前。待ってろよ、Michigan!

途中ヨセミテ国立公園へ寄り道。素晴らしい景色でしたが、怖かったです…。途中ヨセミテ国立公園へ寄り道。素晴らしい景色でしたが、怖かったです…。

 ミシガンに到着後、アパートを探しShili君とルームシェアをして住むことになりました。2LDKくらいの部屋をシェアして、一人当たり$600/monthくらいです。その後、ラボの荷物の荷解きや必要な 講習の受講など雑務をこなして、ようやく落ち着いたのが9月ころでしょうか。年明けにはShili君の転職に伴うプロジェクトの引き継ぎや引越しなどバタバタしたこともありましたが、現在のところ2度目の大移動はなく、Ann Arborで暮らしています。

 

私の現在の職場であるUniversity of Michigan(UM) についてですが、 1817年創立の歴史ある州立大学で、メインキャンパスはAnn Arborという小さな街にあります。こちらも40000人以上の学生が在籍する総合大学で、Times Higher Education World University  Rankingでは17位と非常に高い評価を受けています。地域的な特性もあり、USCに比べると海外からの留学生の比率は低いように感じますが、トップクラスの大学にふさわしい多様性は十分に備えています。Ann Arborはまさに大学街で、 街の中に大学の建物が混在して建設されているような構造をしており、大学と街が一体となっているような印象を受けます。治安も良く、生活費もLos Angelesに比べれば安く、研究者にとっては生活しやすい土地と思います。

右に見える白い建物がAnn Arborのアパートです。敷地はひろく芝生で覆われており、柵などはありません。右に見える白い建物がAnn Arborのアパートです。敷地はひろく芝生で覆われており、柵などはありません。

現在の職場です。ここはもともとPfizerの研究所だったのですが、現在は大学の一部となっています。このビルで有名なリピトールが発見されたそうです。あやかりたい…。現在の職場です。ここはもともとPfizerの研究所だったのですが、現在は大学の一部となっています。このビルで有名なリピトールが発見されたそうです。あやかりたい…。

ミシガンの冬は寒いので、スノーボードなどのウィンタースポーツも楽しめます。
ミシガンの冬は寒いので、スノーボードなどのウィンタースポーツも楽しめます。

 さて、仕事の概要をお話ししますと、 私の研究の主な目的は新規抗がん剤の開発です。Neamati Labには非常にたくさんの化合物がストックされており、これらのなかから抗がん剤として効果が期待できる化合物を発見し、その標的物質や経路を解明するとともに、より効果の高い化合物を新規合成することを目指しています。有望な化合物にあたればかなり興味深い研究を行うことができますが、そこになかなか当たらないのが(当然ですが… )難しいところで、現在も四苦八苦しております。

 

 実際の仕事のスケジュールとしては、隔週の月曜日、朝9時から行われるラボミーティングに出席し、プロジェクトの進捗状況を報告することが義務ですので、この日程である程度のデータを出せるように実験計画を立てて実行しています。このプレゼンさえきちんとできていれば、基本的には何時に来て何時に帰ろうが特に何も言われませんが、怠けていると全然結果が報告できないのと、往々にして実験は計画通りにいかないので、大抵は週末もきて実験をすることになります(これは日本の研究室でも同様かもしれません)。長い休暇はクリスマスの時(ちょうどこれを書いている今)で、あとは必要に応じて相談しながら休みを取ります(施設によって違うのですが、UMでは祝祭日での休暇は年4日くらいしかありません)。


仕事で感じる日米の差異としては、こちらでは 人間関係が比較的フラットな為か、横のつながりが強く、コラボレーションが盛んな印象を受けます。また、学生と指導教官といった関係でもプレゼンの際などは率直に意見を戦わせ、講演後の質疑応答などもかなり活発に行われており、この自由に議論をするという風土がアメリカの科学を進歩させているのだと感じました。反面、こちらではプレゼンテーション能力が非常に重要視されており、ややもすると事実から目を背けてでも美しいプレゼンテーションを取りそうになる危うさも感じられ、どちらかというと中身をより重視する職人的な価値観の強い日本人からすると文化の違いを感じました。


外国での生活は、お金、時間、効率など失うものも多く、何かと苦労もしますが、得られるものも多く、現在の自分にとっては貴重な経験となっています。全員にとって素晴らしいものとなるわけではないと思いますが、チャンスがあれば、特に若い人には、一度海外留学に挑戦してみることをお勧めします。

最後に留学の機会を与えて下さいました、益田宗孝教授をはじめ外科治療学教室の先生方に深く感謝いたします。