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大動脈疾患に対するステントグラフト内挿術

大動脈に対するステントグラフト(stent graft:図1、図2)を用いた治療は、1991年Parodi(文献1)により、腹部大動脈瘤のリスクが高い症例に対する侵襲が少ない血管内治療法として始まりました。バルーン拡張型のステントを人工血管の内側に固定したステントグラフトを、大腿動脈から挿入したシースを通じて腹部大動脈に内挿し、瘤内への血流を遮断して大動脈瘤を血栓化し、瘤拡大および破裂予防を目的とした治療です(図3)。
胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療は1992年にStanford大学グループ(文献2、3)が開始し、1999年には自己拡張型Z stent(図1)と人工血管で作製したステントグラフト(図2)を用いた103例の治療成績(文献3)では瘤の完全な血栓化を86例(83%)に認め、早期死亡(30日以内)は9%で、周術期脳合併症が7例、対麻痺発生が3例と報告しています。
また大動脈解離に対するカテーテル的ステントグラフト内挿術(図4)は、大動脈解離の裂け目をステントグラフトで閉鎖して大動脈が裂けて生じてしまった血管壁内のスペース(偽腔と呼びます)への血流を遮断して、このスペースを血栓化して、偽腔の瘤化と破裂予防を目的とするものであります。
横浜市立大学(文献4)でも、1996年からステントグラフト内挿術を1996年から大動脈疾患に対する治療法として導入しました。とくに大動脈解離に対する治療は2004年12月までに49例に対して施行し、手術死亡および脳脊髄合併症ともありません。またこの初期治療成績をアメリカ胸部外科学会でも報告しました。(文献5)
かつてステントグラフトは図2のような手作りのものを使っておりましたが、その後企業により商品化され、さらに治療成績を見直して、改善されたものが現在では主に使用されています。
またステントグラフト治療の実施においては、2006年12月に発足したステントグラフト実施基準委員会が認定する医師が、認定された施設で施行することを義務づけました。当院もこの実施認定を2009年3月に受け、ステントグラフト実施医が治療にあたっています。
大動脈疾患には、従来の外科治療とステントグラフト治療があります。当院では、患者さんごとに適切な治療方法を選択し、質の高い医療を実践してまいります。

バルーン拡張型のステント 図1 バルーン拡張型のステント
(modified Palmaz stent)


ステントグラフト 図2 ステントグラフト:
Z stent(Cook, Inc., Bloomington, Ind:図1)と人工血管(woven Dacron graft)で作製


腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術 図3:腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(ジャパンゴアテックスより提供)



図4:大動脈解離に対するステントグラフト内挿術

1) Parodi JC, et al: Transfemoral intraluminal graft implantation for abdominal aortic aneurysms. Ann Vasc Surg, 5:491-499, 1991.

2) Dake MD, et al:Transluminal placement of endovascular stent-grafts for the treatment of descending thoracic arotic aneurysms. N Eng J Med, 331:1729-1734, 1994.

3) Mitchell RS, et al: Thoracic aortic aneurysm repair with an endovascular stent graft:'first generation'. Ann Thorac Surg, 67(6):1971-1980, 1999.

4) 鈴木伸一:大動脈に対するステントグラフト内挿術. 急性期大動脈解離症例ノート V章治療J. 編・著 近藤治郎. 発行/メジカルセンス 2003.

5) Kiyotaka Imoto, et al. Early Results of Stent-Graft Treatment fo DeBakey Type III Aortic Dissection.82nd Annual Meeting, American Association for Thoracic Surgery. Washington,USA. 2002.

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