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一般外科 乳腺

乳房の病気について

乳房にできる病気は色々ありますが、一般的に知られているのが乳癌です。乳癌は乳房にしこり(腫瘤)をつくることが多いですが、しこりをつくらずにレントゲン上の石灰化のみで診断される乳癌もあります。また、しこりや石灰化があるからといって乳癌とは限らず、良性の腫瘤の場合もあります。ここでは乳房の病気、特に乳癌について、診断や治療について説明します。

乳房の病気には以下のようなものがあります。

  1. 乳癌:乳房にできる癌です。乳房に固いしこりをつくって発見されることが多いですが、最近では乳房検診の進歩とともに、レントゲン(マンモグラフィー)で石灰化を認めるのみで、しこりをつくらない乳癌も発見できるようになってきました。はじめに自覚される症状は乳房内のしこりで、痛みを伴うことはあまりありません。一般的には痛み=乳癌ではありません。乳癌は悪性腫瘍です。放置しておけば他の臓器(骨・肺・肝臓が多い)に転移していくため、乳癌と診断された場合、治療が必要となります。治療については後で詳しく説明します。
  2. 良性腫瘍:乳房にできるしこりですが、乳癌とは異なり、他の部位に転移したり、生命に影響を及ぼしたりするようなことがない腫瘍を指します。良性腫瘍にも様々な種類がありますが、線維腺腫や嚢胞といったものが一般的なものです。必要があれば局所麻酔で摘出手術をすることもありますが、経過観察のみで良い場合もあります。
  3. 乳腺炎:乳腺の炎症のことです。原因は様々です。症状としては乳房の疼痛、発赤、腫脹を認め、時には38℃以上の発熱を伴います。膿(うみ)がたまっている場合には、切開して膿を排出することもありますが、抗生物質の内服で改善することもあります。
  4. 乳腺症:30~40代に好発する良性の疾患です。乳房の中の乳腺が固く触知するような状態をいいます。時に疼痛を伴います。性ホルモンの不均衡が原因といわれており、月経前に症状が強くなり、月経後は消退することが多いとされています。乳腺症は病気ではないというとらえ方もあり、ほとんどの場合治療を必要としません。ただし、乳癌との区別が難しいこともあり、精密検査が必要になることもあります。

以上が乳房の主な病気ですが、症状別に乳房の病気をみていくと次のようになります。

  1. しこり:しこりといっても様々なものがあります。乳腺が固くふれているもの(乳腺症)、良性腫瘍、乳癌などです。これらを診断するために様々な検査を行います。
  2. 疼痛:一般的に疼痛は生理的なものが多く、乳癌の症状というわけではありません。逆に乳癌はただしこりがあるだけで痛みを伴う場合は少ないといわれています。
  3. 発赤:乳房の炎症によることが多い(乳腺炎)ですが、乳癌が炎症を起こす場合もあり(炎症性乳癌)、注意が必要なこともあります。
  4. 乳頭分泌:乳首からの分泌のことです。透明なもの、ミルク様のもの、血性のものがあります。透明なもの、ミルク様のものは生理的な場合や良性腫瘍が原因とされることが多いですが、血性のものは乳癌の可能性があり注意が必要です。
  5. 乳頭湿疹:乳頭、乳輪部の皮膚がかぶれた状態です。単なる湿疹の場合が多いですが、なかなか治らない場合には乳癌の特殊なもの(パジェット病)であることもあり、注意が必要です。

以上のように乳房の病気にも様々な症状がありますが、症状からすぐに診断するのは困難です。ただ“乳房にしこりがある”といっても、それが良性腫瘍なのか、悪性腫瘍なのかということが問題になります。それらを診断するために様々な検査をすることになります。以下、乳房の検査について説明します。

乳癌の検査について

  1. 触診:もっとも簡単な検査です。手の指先で乳房を圧迫してしこりがないかを確認します。古くから乳房検診で行われてきましたが、初期の乳癌はしこりが小さく、触診だけではわかりにくい乳癌もあります。そのため、触診だけでなく、マンモグラフィーあるいは超音波を行うことでより精密な検査ができるようになります。
  2. マンモグラフィー:乳房を圧迫して薄くし、レントゲンを撮る検査です.乳房のしこりや石灰化をみつけることができます。圧迫するときに多少の痛みを伴います。乳房検診の一次検査としても一般的になっています。
  3. 超音波:乳房に超音波を当ててしこりを描出します。妊婦の腹部に当てて胎児をみる時にも使う検査です。検査時に痛みはありません。3mm程の小さいしこりでもみつけることができますが、石灰化をみるにはマンモグラフィーの方が優れています。
  4. 穿刺吸引細胞診:乳房にしこりを認めたときに、そのしこりが良性なのか悪性なのか判定するために行う検査です。乳房に細い針を刺して、しこりから細胞を吸い取ります。とれた細胞を顕微鏡でみて細胞の良悪性を1(良性)から5(悪性)の5段階で評価します。
  5. 針生検:穿刺吸引細胞診より太い針を乳房に刺してしこりの一部をとる検査です。穿刺吸引細胞診より多くの情報を得ることができるため、穿刺吸引細胞診で確定診断できなかった場合に行うことが多いです。太い針を刺すため、局所麻酔をしてから行います。
  6. 摘出生検:穿刺吸引細胞診や針生検では確定診断が難しい場合に行う検査です。局所麻酔をして、しこりを全て切除します。確定診断と同時に治療にもなる場合があります。
  7. CT:簡単に言うと、体の輪切りのレントゲン写真を撮る検査です。リンパ節転移や肺・肝臓への転移の有無を確認し、乳癌の進行具合をみることができます。
  8. 骨シンチ:骨への転移の有無を確認する検査です。検査用の注射をしてから数時間後に撮影をします。一度に全身の骨を評価することができます。

以上のように様々な検査がありますが、全ての検査を同時にやるわけではありません。検査の流れをみていくと、以下のようになります。

まずはじめに触診、そしてマンモグラフィー、超音波を行います。あまり異常がなさそうな場合には、マンモグラフィー、超音波のどちらか一方のみしか検査を行わないこともあります。
しこりが疑われた場合、超音波でみながら穿刺吸引細胞診、あるいは針生検を施行します。
これで良性と判断できれば経過観察となります。
良性か悪性か判定が困難な場合には、さらに摘出生検をして確定診断します。
悪性と診断された場合には、進行具合を把握するためにCTや骨シンチを行い、それに合わせて治療法を計画します。

治療について
治療は大きく分けて手術、化学療法(抗癌剤治療)、放射線療法があります。それぞれを単独で行うだけでなく、組み合わせた治療を行うのが一般的です。

  1. 手術:以前は乳癌のある乳房を全て切除するのが一般的でしたが、しこりの大きさ(3cm以下)によっては乳房の一部分のみを切除する乳房部分切除術も行われるようになってきました。また乳癌は腋の下のリンパ節に転移することが多いため、その部分のリンパ節を切除(リンパ節郭清といいます)します。最近では一部のリンパ節のみ切除して、手術中に迅速診断し、癌がなければそれ以上のリンパ節は切除しないといった、縮小手術も行われています(センチネルリンパ節生検)。これらの手術方法は患者さんそれぞれに合わせて選択しています。
  2. 化学療法:抗癌剤治療のことです。多くの場合点滴で行いますが、内服(飲み薬)の抗癌剤治療薬もあります。癌に対する作用(主作用)だけでなく、副作用もあります。副作用の主なものは、白血球の減少(免疫力の低下)、食欲不振、嘔気・嘔吐、脱毛などがありますが、使う薬によって様々です。
  3. 放射線治療:乳房に放射線をあてる治療です。乳房温存手術をした後の残存乳房に対して行います。副作用としては、放射線を当てた部位の皮膚炎や、肺炎、時に白血球の減少を認めることもありますが、ほとんどの場合、治療が終了すれば改善します。
  4. ホルモン治療:乳癌は女性ホルモンで増大することが知られています。これら女性ホルモンを抑制する治療です。閉経前と閉経後では使用する薬が異なりますが、多くは内服薬で、抗癌剤治療に比べると副作用は軽度です。ただし、ホルモン治療は全ての症例に効果があるわけではありません。手術で摘出した癌細胞を調べ、ホルモン治療が効くかどうか確認し、効果がある場合に使用します。

以上の治療を患者様の病状に合わせて選択、組み合わせて、その人その人にあった治療を行っています。

(文責:中山)