甲状腺良性腫瘍は、甲状腺にできる非がん性の腫瘍のことを指します。腫瘍には、嚢胞(液体が溜まった袋状のもの)や腺腫(細胞の増殖によるしこり)などがあります。
多くの場合、腫瘍は良性で生命に危険を及ぼしませんが、術前に良性腫瘍と悪性腫瘍(甲状腺癌)との鑑別がつかないものや偶発的に悪性腫瘍が認められる場合もあります。また、甲状腺機能に影響を及ぼす腫瘍もあります。
小さい腫瘍は自覚症状がないことが多いですが、大きくなると首の腫れやしこりとして気づくことがあります。周囲の組織を圧迫すると、違和感や圧迫感、飲み込みにくさなどを感じることもあります。場合によっては、ホルモン異常による動悸や疲れやすさが見られることがあります。
診断には、首の触診や甲状腺超音波検査を行うほか、腫瘍の性質を調べるために細胞診(針を刺して細胞を採取する検査)や血液検査で甲状腺ホルモン値を確認します。また、必要に応じてCTやMRIなどを用いて詳しく調べることもあります。
腫瘍が小さく、症状やホルモン異常がない場合は経過観察が選択されることが多いです。一方で、腫瘍が大きい場合や周囲の組織に影響を及ぼしている場合は、手術で腫瘍を摘出することがあります。良性腫瘍であっても、ホルモンに影響を及ぼす場合は手術や放射線治療、薬物療法が必要になることもあります。
甲状腺良性腫瘍は、その多くが経過観察で十分対応できるものです。ただし、腫瘍が急に大きくなったり、違和感が強くなったりした場合は早めに医療機関を受診してください。日常生活に大きな制限はありませんが、医師の指示に従い、定期的な検査を続けることが重要です。不安なことがあれば遠慮なくご相談ください。