消化管非上皮性腫瘍

Gastrointestinal non-epithelial tumor

消化管非上皮性腫瘍とは?

上皮というのは表皮や消化管壁の表面を覆っている粘膜などを指し、ここから発生する悪性腫瘍を「癌」といいます。

一方で非上皮とは筋肉・脂肪などを構成する細胞であり、消化管の壁の筋肉や神経組織から発生する腫瘍を「消化管非上皮性腫瘍」といいます。これらの腫瘍は比較的稀で、発生源の細胞や組織によってさまざまな種類が存在します。

消化器・一般外科沼田 幸司

主な消化管非上皮性腫瘍

  • GIST(消化管間質腫瘍):
    消化管非上皮性腫瘍の中では比較的頻度の高い悪性腫瘍です。筋層にある消化管運動を調節する細胞(またはその前駆細胞)から発生すると考えられています。
    胃(60-70%)、小腸(20-30%)、大腸(約5%;主に直腸)、食道(1-2%)と臓器により頻度が異なります。

  • 悪性リンパ腫: 
    胃、小腸に多く、化学療法が中心となりますが、診断目的や症状があるときに手術を検討します。

  • 脂肪腫/平滑筋腫: 
    消化管の壁にある脂肪細胞や筋肉の細胞(平滑筋細胞)から発生する良性腫瘍です。症状がなければ経過観察となりますが、症状がある場合や増大傾向の場合には外科的切除を検討します。

  • 脂肪肉腫/平滑筋肉腫:
    悪性腫瘍です。進行が早く周囲組織への浸潤が強く、遠くの臓器への転移を起こすこともあります。外科的な完全切除が基本となりますが、再発や転移が多く予後不良のことも多いです。

  • 神経系腫瘍: 
    良性腫瘍のものが多いですが、増大傾向や症状を伴う場合には外科的切除を検討します。

診断

消化管非上皮性腫瘍の診断には、以下のような検査が用いられます。

内視鏡検査(胃カメラ/大腸カメラ)

消化管の内壁を観察でき、組織の採取ができる検査です。

画像診断

超音波検査、CT、MRIで腫瘍の位置や大きさ、浸潤・転移の有無を評価します。PET-CTは悪性度や転移の評価に有用です。

組織診断

最終的な確定診断には組織検査が必要です。
その他、組織検査によりGISTでは悪性度の評価ができます。
さらに、腫瘍組織から行う遺伝子検査により、分子標的薬や化学療法の治療選択が行われます。

治療法

外科的切除

GISTや肉腫では原則として完全切除を考慮します。
悪性リンパ腫では診断目的(組織のタイプによりその後の治療が異なるため)や症状(出血や腸閉塞など)がある場合などに手術を検討します。
良性腫瘍でも症状がある場合や悪性が疑われる場合に手術を検討します。

薬物療法

分子標的薬;GISTなどの特定の腫瘍に用いられます。
化学療法;悪性リンパ腫や肉腫の一部に使用されます。

放射線療法

悪性リンパ腫では放射線治療が有効であり、外科切除が困難な場合の病変の制御などに使用されます。
その他の悪性腫瘍では外科的切除が第一選択のため、腫瘍の増大を抑えて症状を緩和する目的として使用されることがあります。