転移性肺癌とは、肺そのものからできる癌(原発性肺癌)とは異なり、他の臓器の癌が肺に転移してきたものです。他の臓器からの転移であるため、肺の中に存在する癌でもその細胞は肺の細胞ではなく元の臓器の細胞からなり(例えば大腸癌の転移であれば、肺の中であっても腫瘍自体は大腸由来の細胞となります)、治療を考えるうえでは肺癌の専門家ではなく元の臓器の癌の専門家の見解が重要となります。
呼吸器外科足立 広幸
他の癌の治療後に再発チェック目的で行なったレントゲン・CTで発見されることが多く、自覚症状がないことが多いです。肺の病変のみが進行してくると正常な肺を破壊するため肺の機能が低下し、咳や息切れ、胸の痛み、血痰などの症状が現れることがありますが、通常は他の臓器にも同時に転移を来たすことが多く、その場合は他の臓器の症状が現れることがあります。
他の癌の治療後に再発チェック目的で行なったレントゲン・CTで発見されることが多いです。肺に影が見つかった場合は薄層CTやPET検査を追加して『転移性肺癌の可能性』や『他の部位への転移の有無』を調べます。最終的に転移性肺癌の診断を確定するためには癌の一部を採取して顕微鏡検査での確認が必須ですが、病変が小さいことが多く診断確定と治療の両方を兼ねた手術を行うことがほとんどです。
他の臓器への転移がなく、肺への転移個数が少ない場合は手術で切除することで癌の根治に貢献できることがあります。一方、肺の病変の個数が多い場合や他の臓器にも転移している場合には、診断のための手術を行うことはありますが治療としては有効でない場合が多く、元の臓器の癌の専門家によって抗癌剤治療などが行われます。
転移性肺癌を手術することが有効かどうかは元の癌の種類で異なります。大腸癌や骨肉腫などの転移であれば肺の手術は有効とされる一方、胃癌や乳癌などではその有効性は分かっていません。転移性肺癌を手術する必要性や治療としての有効性に関しては元の臓器の癌の専門家にご相談ください。