悪性胸膜中皮腫

Malignant pleural mesothelioma

悪性胸膜中皮腫とは?

悪性胸膜中皮腫は、胸壁の内側や肺の表面をおおう膜(胸膜)から発生する悪性腫瘍で、そのほとんどがアスベスト(石綿)を吸い込んだことが発生の原因となっています。ただし、アスベストを吸い込んだ方が必ず発症するわけではありません。また、アスベストを吸い込んでから発症するまでの期間が30~40年と非常に長いことが特徴です。

呼吸器外科足立 広幸

症状

胸の痛みや咳など症状でレントゲンを撮影した際に、胸に水が溜まっている(胸水)ことを指摘されて発見されるのが一般的です。また、症状はなくアスベストを使用した仕事に従事していた方の「アスベスト検診」で見つかることも多々あります。

診断

その診断は難しく、胸にたまった水(胸水)を抜いてその水の性状や中の細胞の形態を調べるだけでは診断に至らないことが多いです。多くの患者さんで最終的には局所麻酔下もしくは全身麻酔下に胸壁の内側の壁の一部を採取し(胸膜生検)、組織の顕微鏡検査で診断する必要があります。

治療法

悪性胸膜中皮腫は非常に治りにくい病気の1つで、手術、放射線療法、抗がん剤治療などの治療法がありますが、残念ながら発見されたときにはすでに進行しており、ほとんどが手術治療の適応とならないことも特徴の1つです。ごく限られた早期の悪性胸膜中皮腫症例では胸膜肺全摘術や胸膜切除/剥皮術を行うこともありますが、手術のみで根治することは難しく手術が施行できる方でも術後に抗癌剤治療や放射線治療を組み合わせて行うのが一般的です。

患者様へ

当院では呼吸器内科と連携し、診断のための胸腔鏡下胸膜生検や、極早期で発見された上皮型悪性胸膜中皮腫に対する集学的治療の一環である根治手術(胸膜全切除術・胸膜肺全摘術)を行っております。また、当大学の関連施設である横須賀共済病院は日本でも有数の悪性胸膜中皮腫治療経験を有しておりますので同施設に紹介し治療を行ってもらうことも可能です。
通常は手術前日に入院、診断のための生検は術後2~3日間で、治療のための手術は術後10~20日で退院となります。