通常、肺は胸腔という空間の中にあり、肺と胸壁の間には少しの液体があり肺がスムーズに膨らんだりしぼんだりするのを助けています。しかし、この空間に何らかの理由で空気が漏れる・入り込むことで肺が十分に膨らめなくなる病気を気胸と言います。
原因は様々で、若年の男性に多い特発性自然気胸から、肺気腫などの元の肺の脆さが原因で発生する続発性気胸、月経周期と連動して発生する月経随伴性気胸など多岐にわたります。
呼吸器外科足立 広幸
突然の胸の痛みで発症することが多く、しばしば鋭い痛みが片方の胸に感じられることがあります。また肺が縮むことで息を吸うのが苦しくなることがあります。さらに漏れた空気が刺激となって乾いた咳が出ることもあります。
レントゲンやCTで肺がしぼんでいることを確認した場合に気胸と診断されます。気胸となった詳しい原因を調べるために追加でCTなどを行うこともあります。また極まれではありますが、特殊な原因を調べるために採血や遺伝子検査などを行うこともあります。
軽度の気胸の場合は自然に治ることを期待して過度な運動を避ける安静治療を行います。肺の縮みが大きい場合には局所麻酔で胸にチューブを挿入して空気を吸いだす治療(胸腔穿刺、胸腔ドレナージ)や、それでも改善しない場合は手術が行われることがあります。
特に、再発の場合は今後も再発を繰り返す可能性が高いため、原因を取り除くための手術をお勧めします。もともとの肺が悪く手術が不可能な場合には入院して胸膜癒着療法や気管支充填術などを行うことがあります。
当院ではいずれの原因の気胸に対しても対応可能であり、手術は基本は完全胸腔鏡下手術を行っております。特に若年者の特発性自然気胸に対しては1つの小さな傷で胸腔鏡下手術を行う『Uniport VATS』も可能ですのでご希望あればご相談ください。突然発症し緊急入院となることが多いため入院期間はまちまちですが、胸腔鏡下手術後は問題なければ術後2~3日で退院となります。