原発性肺癌とは、肺そのものにできる癌のことです。2019年のデータでは、部位別の各種癌のうち原発性肺癌と診断された患者数は第2位(男性4位、女性3位)、癌が原因で死亡した患者数は1位(男性1位、女性2位)と診断患者数・死亡数ともに非常に多い癌です。一般的に男性に多い傾向がありますが、最近では女性の非喫煙者の発症率も増加しています。特に60歳以上の人々の発症が多いです。
呼吸器外科足立 広幸
早期のうちは特に自覚症状はなく、健診や他の病気の検査のために行なったレントゲン・CTで発見されることが多いです。癌が進行してくると正常な肺を破壊するため肺の機能が低下し、咳や息切れ、胸の痛み、血痰などの症状が現れることがあります。また、他の臓器(脳、肝臓、副腎、骨などが多いです)に転移を来たすとそれに伴う症状(麻痺や骨の痛みなど)が現れることがあります。
レントゲンやCTで原発性肺癌を疑う影が見つかった場合は、薄層CTやMRI、PET検査を追加してさらに『原発性肺癌の可能性』や『他の部位への転移の有無』を調べます。最終的に原発性肺癌の診断を確定するためには癌の一部を採取して顕微鏡検査での確認が必須です。気管支鏡検査やCT下生検で癌の一部を採取する方法が一般的ですが、早期癌の場合は小さいため採取が難しく、診断確定と治療の両方を兼ねた手術を行うことも多々あります。
早期癌や局所にとどまっている進行肺癌に対しては、肺を切除しても耐えられる肺機能がある場合は手術が第1選択となります。局所進行癌に対しては根治の可能性をあげるために手術前や手術後に抗癌剤治療や放射線治療を追加することもあります。肺機能が悪く肺を切除できない方には抗癌剤・放射線治療を行います。他の臓器に転移してしまっている場合には抗癌剤治療が行われます。
当科では大学病院の技術を生かして早期癌に対する低侵襲手術から局所の進行癌に対する拡大手術まで幅広く原発性肺癌の根治手術を行っております。
特に、早期癌に対しては区域切除術、局所の進行癌には気管支形成術などを行うことで根治性を落とさずに極力、肺を残すことを重視しています。
他院で手術困難と言われた方、また肺の全摘が必要と言われた方も、当院では極力肺を残した根治手術が可能かもしれませんので是非、ご相談ください。