甲状腺に発生する悪性腫瘍を指します。甲状腺癌は、進行がゆっくりであり予後は良好であることが多いですが、一方で、極めて進行が早く予後不良なものもあります。癌の種類や進行度に応じて適切な治療法が選択されます。
乳腺・甲状腺外科菅沼 伸康
多くの場合、症状がないまま超音波やCT検査で発見されることが一般的です。一方で、首のしこり、圧迫感、飲み込みづらさ、声のかすれや出しにくさなどの症状が現れることもあります。生活に支障が出たり症状が急速に悪化する場合は、早めの受診をおすすめします。
超音波やCTなどの画像検査で悪性を疑う所見が認められた場合には、細胞診や組織診を用いた病理検査が必要です。ただし、濾胞性腫瘍のように細胞診や組織診では診断が困難な場合があり、その場合には手術で腫瘍を摘出して診断することがあります。また、治療方針を決める際に遺伝子検査が有用な場合があり、適応となる患者さんにはご案内します。
治療の中心は外科治療(手術)です。早期の甲状腺癌では、甲状腺の一部を切除する葉切除術を行い、進行癌や多発性の場合は甲状腺全摘術が選択されます。癌の種類や進行度に応じてリンパ節郭清術の範囲を決定します。条件を満たす場合には内視鏡手術が適応となることもあります。進行癌ではアイソトープ治療や分子標的治療を行う一方、ごく早期の癌では積極的経過観察を選択する場合もあります。
甲状腺癌の多くは進行がゆっくりで他の癌に比べて穏やかな性質を持つものが一般的ですが、まれに急速に進行するタイプもあり注意が必要です。また、甲状腺は代謝を活性化する重要なホルモンを分泌する臓器であり、機能的な管理を求められるほか、頸部には気管、食道、大血管、神経が集中しており、専門的な治療が求められます。当院では大学病院の特性を活かし、各科と連携しながら、手術を中心にアイソトープ治療や分子標的治療を含む総合的な治療を提供しています。