Q
この手術を受けることができる人はどんな人ですか?
A
胸腔鏡下左心耳閉鎖術は、心房細動という不整脈がある方の心原性脳梗塞(心臓でできた血栓が脳に流れ、大きな脳梗塞を起こす事)のリスクを減らすために行われる手術です。
左心耳は左心房の脇に「耳」のようについている部分ですが、心房細動になると、この左心耳の中に血栓(血のかたまり)ができやすくなります。この血栓が全身に飛ぶ可能性がありますが、脳に飛ぶと脳梗塞になり、場合によっては麻痺や言葉のもつれなどがずっと続きます。このため血栓ができないように、通常は血液をサラサラにする薬を飲むことになりますが、この左心耳をクリップで閉じることで血栓ができるのを防ぐことができます(左心耳は閉じても問題ありません)。
この手術は以下のような患者さんに受けていただくことが一番のメリットと考えられます。①心房細動(非弁膜症性)により、左心耳に血栓ができやすく、心原性脳梗塞のリスクが高い方。②ワルファリンやDOAC(直接経口抗凝固薬)などの血液をサラサラにする薬が副作用(出血のリスクが高い方、消化管出血や脳出血の既往)のために使用できないなどの抗凝固薬の使用が難しい方。③既に抗凝固薬を使用しているにも関わらず、繰り返す脳梗塞などでさらに安全性を確保し血栓のリスクを減らす必要性がある方。
胸腔鏡という小さなカメラを用いるため、小さな傷で手術ができ、入院期間も短く、体への負担が少ない手術方法です。
Q
入院期間はどのくらいですか?
A
順調に経過した場合は約7日間を予定しています。手術翌日からは食事や歩行が開始となります。日常生活へは2〜4週間程度で復帰が可能となります。手術前の検査に関しても、なるべく少ない来院回数と早期の手術を心掛けています。ただし、追加検査が必要になった場合や、先に治療した方が良い病気が見つかった場合はその限りではありません。
Q
手術後は抗凝固療法の中止が可能ですか?
A
可能です。手術によって左心耳が確実に閉鎖され、血栓のリスクが大幅に低下した場合に中止できます。ただし、特殊な心筋症や特定の血液疾患の方は内服継続の必要があります。また、一定期間内服したのちに終了とすることもあります。担当医にご相談ください。
Q
新しい手術と聞きましたが安全ですか?
A
胸腔鏡を使った手術自体は呼吸器外科で昔から行われている安全性の高い手術です。当院では、胸腔鏡を普段から使って手術をしている呼吸器外科とも常に連携を取りながら安全な手術を行っています。また、実際に左心耳を閉鎖する際はクリップを使うことにより心臓からの出血の可能性を最小限に抑えています。
安全性の観点より、以下の患者様は手術に適さない可能性があります。左心耳の形態が特殊で閉鎖デバイス(クリップなどの左心耳閉鎖を行う機械)の適用が難しい方、重篤な他の疾患(例: 進行性のがんや重度の呼吸器疾患や手術の経験)がある方、感染症(手術前に治療が必要なため)がある方は、手術前検査等で個別に検討が必要となりますので担当医にお尋ねください。