大人になった先天性心疾患「成人先天性心疾患」の生涯を診る
心臓血管外科 立石 実
Q
先天性心疾患の人で、大人になる人はどれぐらいいるのでしょうか?
A
先天性心疾患の手術ができるようになったのは今から約70年前ですが、治療成績は飛躍的に向上し、今では90%以上の先天性心疾患の人が大人になる時代になりました。国内にはすでに成人になった先天性心疾患の人は50万人以上いると言われています。
Q
大人になった先天性心疾患の人は、どんな問題があるのでしょうか?
A
「症状がない」「根治術と言われて完全に治ったと聞いている」「薬を飲んでいないし、困っていない」「大人になったので、小児科に行きづらくなった(行けなくなった)」「進学、就職、転居などで病院に行かなくなった」などで、病院にしばらくかかっていない人がいらっしゃると思います。
しかし、手術をして数十年経ってから、以前受けた手術の影響や元々の病気の悪化で、何らかの症状や問題が出てくることがあります。
何らかの症状が出て悪くなる前に、適切なタイミングで適切な手術や治療を受けることが、長く元気でいられるためにはとても重要です。
Q
病院にしばらくかかっていないと、どうなる可能性がありますか?
A
たとえばファロー四徴症は、以前は子どもの頃に手術をして「治った」と言われているかもしれませんが、手術後数十年たつとさまざまな問題が出てくることが世界中で報告されるようになりました。ただし、適切なタイミングで治療を行えば、その後も元気に過ごせるようになります。
しばらく病院にかかっていないと適切なタイミングで治療が行えない可能性があります。症状が出てからでは遅い、という場合もあるため、定期的に専門病院で診てもらうことをおすすめします。
Q
以前かかっていた病院に長くかかっていません。どうすればよいですか?
A
特に小さい頃に手術をされた方ことがある方は、以前かかっていた病院に、紹介状(診療情報提供書)の作成をお願いしてご持参して頂けると、これまで受けた手術や治療、カテーテル検査の結果などを確認することができて、状況をより正しく判断することができます。
先天性心疾患の専門の医師は、患者さんがさまざまな理由で病院にかからなくなることがあるのは十分に理解しているため、遠慮せずご相談ください。心臓血管外科の成人先天性心疾患の専門外来は火曜・木曜です。お時間に余裕をもってご来院ください。
なお、当院は日本成人先天性心疾患学会が認定した専門医総合修練施設です(2023年4月1日現在、全国に総合修練施設は42施設、神奈川県には2施設)。大人になった先天性心疾患の患者さんは、妊娠・出産のご相談なども含めて、当院の各科が積極的に診療にあたっています。
先天性心疾患の人が生涯にわたって長く元気でいられるよう、日々邁進しています。
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