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消化器外科 上部消化管疾患(食道・胃・十二指腸)

食道癌について

食道癌の治療は食道癌治療のガイドラインといものが食道学会で作られ、食道学会のホームページに載っており当科でもこれに倣って治療をおこなっています。ガイドラインの大筋は以下のようなものです。

 食道癌の診断は内視鏡検査、バリウムを用いたレントゲン検査、CT検査が主に行われます。深達度診断は超音波内視鏡が用いられますが絶対的なものではありません。

 それでは食道癌の症状はどういったものがあるのでしょう。粘膜下層までの比較的深達度の浅い癌では約60%が症状はなく,検診や他疾患のための検査などで発見されています。一方、筋層以深に及ぶ深い癌では狭窄感,嚥下困難などの症状が20-40%にみられ,大部分が有症状で発見されているのです。早期発見には検診が重要と考えられます。検査は内視鏡検査の方が食道造影検査より発見率が高いとされています。

  食道癌の治療、特に手術となると頚部、胸部、腹部と3つの領域を手術することになりますので、全身状態の検査が行われます。心機能、呼吸機能、肝臓及び腎臓機能、血糖値等です。また喫煙も重要で肺炎などの合併症を起こさないようにするためにも禁煙を指導しています。
食道癌の治療方針決定までの流れ

食道癌でも早期であれば内視鏡による切除が可能です。当院では消化器内科に依頼し本治療を行っています。偶発症として、切除に伴う出血,食道穿孔,切除後の瘢痕性の狭窄などが報告されています。

手術療法について

食道は頚部食道、胸部食道、腹部食道に大きく分類されます。頚部は耳鼻咽喉科と重なる部分があり、腹部は胃癌と重なる部分が大きいためここでは胸部食道癌について述べます。解剖学的、つまり構造上胸部食道が肋骨に囲まれた中にあるため手術も単純ではありません。先に記述したとおり頚部、胸部、腹部の3領域の手術になります。通常、頚部は鎖骨の上を襟状に切ります。胸部は右の肩甲骨の下を肋骨に沿って背中から脇にかけて切ります。腹部は上腹部の正中を切ります。最近は鏡視下手術も施行しますので少し創の形状が異なっています。これらの手術創からリンパ節郭清とともに胸腹部食道は全摘し,転移頻度の高い胃小彎側リンパ節を切除します。切除した後は胃、大腸、小腸などを使って消化管を再建し、食事ができるようにします。主に使うのは胃です。再建経路は胸壁前,胸骨後,後縦隔(胸腔内を含む)の3経路があります。胸骨後経路が多く施行されてきましたが、最近では高位胸腔内吻合を含めると後縦隔経路による再建も施行するようになっています。

切除できない進行癌の場合の手術

他の内臓に浸潤していたり、肺や肝臓などの遠隔臓器へ転移している進行食道癌の治療は,まず放射線療法や化学療法をおこないますが食道狭窄や食道気道瘻を伴う場合、食事が摂れませんので、日常生活のレベルは著しく低下します。このような悪性閉塞症例に対する経口摂取や経管栄養を可能にするための対症療法としてバイパス手術、食道ステント挿入術、腸瘻・胃瘻造設のような治療が行われています。食道ステント挿入術は癌腫狭窄部にプロテーゼを挿入し,内腔を拡張し経口摂取を可能とする方法です。 腸瘻・胃瘻はそれぞれ小腸や胃にチューブを挿入し栄養をあたえる方法です。

化学放射線療法について

食道癌において同時化学放射線療法は放射線照射単独に比し有意に生存率を向上させることが比較試験で証明されており,非外科的治療を行う場合の標準的治療として位置づけられています。根治を目指した化学放射線療法の対象となるステージ(UICC-TNM)は,T1-3N0,1M0の切除可能ステージ,切除不能のT4N0,1M0,および一部のM1LYM症例です。切除可能ステージでの外科手術との比較では後ろ向き研究で手術に匹敵するとの報告もありますが,直接の比較試験の報告はなく,現時点では治療選択肢の一つとして,手術に適さないあるいは食道温存を希望する症例に適応されています。当院では5-FUとシスプラチンによる併用化学療法に放射線照射を50-60Gy同時に併用する治療法を行っています。

術前化学療法 2008年の米国臨床腫瘍学会などに日本から術前化学療法と術後化学療法の効果を比較した検討(JCOG9907)が報告されました。StageⅡ、Ⅲでは術前化学療法を施行した方が術後に化学療法をおこなったより治療成績が改善するという内容でした。当院でも術前評価がStageⅡ、Ⅲとなった場合、術前化学療法を施行してから手術をおこなう方針としました。

以下に進行度、つまりステージ(Stage)診断後の治療方針を決める流れを示します。

最後に当科での1991年の開院から2007年までの食道癌の治療成績は以下のグラフのごとくであります。 Stageとは癌の進行程度を表すもので胃癌に限らず肺癌、乳癌など他の癌でも使われている言葉です。大雑把に言ってStageⅠは早期であり治療すればほとんどの場合治るというものでStageⅣというのは手術では取りきれないのでほとんどの場合死亡するというものです。つまりStageの数字が大きいと死亡する確率が高くなるということです。下のグラフで見るとStageⅣの線は右肩下がりでStage0はほとんど水平な線となっています。これは生存している方が多ければ線は水平に近くなりますし、死亡する方が多ければ右肩下がりになるということ表しています。
1991年の開院から2007年までの食道癌の治療成績

(文責:利野 靖)