大腸外科
国立がんセンター東病院 大腸外科 片山
2016年4月から2年間、国立がんセンター東病院 大腸外科でシニアレジデントとして国内留学させていただきました。この場を借りて報告させていただきます。
(2年目には手術棟がリニューアルされ、腹腔鏡のトレーニングルームやライブ手術が可能な部屋が併設されました。)
レジデントの生活は決して楽ではありませんでした。朝は6時50分に病棟に集合して患者さんの回診を行います。そこで病棟業務は全て終わらせておき、8時からのカンファランスに臨みます。カンファランスは病棟に関することはもちろんのこと、前日の手術のビデオを3分程度に編集してまとめたものを皆で供覧します。手術ビデオの編集はレジデントの業務であり、自分の術者の症例だけでなく、第一助手で入った手術の編集も行います。すなわち、どんなに遅くに終わろうと、その日の内に手術ビデオを自分で見直して、ビデオ編集をしなくてはなりません。しかし、これが非常に勉強になり、自分の力になりました。まだ記憶に新しいうちに手術ビデオを見返して自分で反省し、さらに翌日のカンファランスでスタッフ含めた皆からの意見を聞くことでさらに手術の理解を深めることができました。
大腸外科の手術は毎日あり、自分は腹腔鏡手術を週1例程度のペースで執刀の機会を与えていただきました。手術は定型化されており、全員ほぼ同じやり方で手術しておりましたので、自分が執刀していない時でも見学しているだけで手術の細かいコツやピットフォールを理解することができました。スタッフの先生は4人おりましたが、科長の伊藤雅昭先生をはじめ、どの先生方も卓越した手術技術をお持ちであり、見ているだけでもとても刺激になりました。また助手に入っていただいた時も、手術中の助言や的確な視野出しで、癌として適切できれいな手術に導いてもらえました。このような環境に身を置くことで、留学した1年目で内視鏡外科技術認定医に無事に合格することができました。
また東病院大腸外科は直腸癌手術におけるTransanal total mesorectal excision (TaTME)のトップ施設でもあります。TaTMEは、シングルポートの腹腔鏡技術を使用し経肛門から逆行的にTMEを行う手術です。直腸癌手術は、狭い骨盤内での手術でありworkspaceが制限されることや視野確保が難しいことから、一般的に結腸癌手術よりも技術的な難易度が高い手術と考えられております。しかしTaTMEは骨盤腔に最も近い場所からアプローチすることができ、良好な視野を展開することができます。また肛門からの剥離を行っているのと同時に、腹腔側からも別のチームが手術を行うことが可能であり、手術時間が短縮されます。括約筋間直腸切除術(ISR)が1時間40分程度で終了したこともあり、とても驚きました。また骨盤内臓全摘もTaTMEを併用することで2時間30分程度で検体が摘出されたことがありました。日本のみならず、中国や台湾など世界中からのDrが見学に来ておりました。私も、TaTMEの助手を何例も経験し、最後には執刀もさせていただきました。肛門からの骨盤内の解剖の理解も深められたと思いますし、ぜひこの経験をこれからに生かせればと思います。
東病院大腸外科は手術ばかりでなく、医療機器開発なども積極的に行っており、非常に幅広い研究を行っています。常に新しいものに挑戦して、成長を続けようという雰囲気でした。こういった環境で働くことはとても楽しく刺激になりました。スタッフの先生方はレジデントをしっかりと育てようという気持ちに溢れており、またレジデントは一緒に切磋琢磨できるいい仲間達でした。
(忘年会にて1発芸を皆で行いました。)
最後に留学の機会を与えてくださった益田宗孝教授をはじめ外科治療学の先生方に深く感謝いたします。
(レジデント卒業式)